Menu

hanon

[はのん] 生活を楽しむあなたに贈るライフスタイルWebマガジン

シバトモのおきらく鳥♪日記 / 008

こんにちは。ごくごく普通のおばさんコピーライター、シバトモです。子育ても親の介護も経験し、もう人生後半戦。趣味はバードウォッチング、といっても、いっこうに上達しない万年ビギナーです。性格はいたってお気楽。そんな私がつづる「おきらく鳥♪日記」。どうぞ、おつきあいください。

凍てついた風景の中にも、ほらね。
野に、山に、森に、ちいさい春みつけた!

一年の中で寒さの底といわれる2月。でも、思い切って戸外へ出かけてみると、冬枯れの景色の中に、ひっそりとではあるけれど、春が始まっています。雑木林や水辺はもちろん、街中の公園や街路樹にも、春のきざしがそこここに。小さな春がくれる、ワクワクやドキドキ。私にとって、早春は、らんまんの春本番にも増して心弾む季節なのです。

一面の雪に覆われた大地。よ〜く目を凝らすと、春が芽吹いていました。流れの傍らで花開いているのはフキノトウでしょうか。雪が解けた木の根の回りにはフクジュソウ。モノトーンの風景の中で小さいながら頑張っている可憐な黄色には、思わずうれしくなります。
葉を落とし見るからに寒々しい木々にも、春がいっぱい! ふさふさしたコートを着ているのはコブシの冬芽。サクラがまとっているのはウロコ状のヨロイ、濡れそぼったように見えるトチノキの冬芽は粘液に包み込まれて…。それぞれが工夫を凝らして寒さと乾燥から葉や花の芽を守っているのに感心することしきり、見飽きません。
そうそう、忘れられない早春のおいしい思い出があります。ある探鳥会に参加した際のこと。お昼時、幹事の方から「セリがいいですか、クレソンがいいですか?」と突然聞かれました。何のことか分からずキョトンとしていると、あったかいみそ汁と、その日摘んだばかりのみずみずしいセリとクレソンがたっぷり用意してあったのです。私はクレソンを選んでお椀に入れ、上からアツアツのみそ汁を注いでもらいました。口中にフワ〜ッと広がった春の香りと味わい! 何年もたった今でもはっきり記憶に残っています。

「春の訪れは耳で感じるのがいい」と言った人がいるそうです。早春の渓流には、春の音があふれています。雪が解け、水かさが増すにつれ、次第に大きくなっていく流れの音。その音にかき消されることのない大声で、美しいさえずりを聞かせてくれる鳥がいます。渓流のソプラノ歌手?とでも呼びたいミソサザイです。みそ玉のような小さな体を震わせながら、渓谷中に響けとばかりにさえずる複雑なメロディーは、春が来た! 春が来た! とはしゃいでいるようにも聞こえ、時間のたつのも忘れて耳を傾けてしまいます。
いつだったか、雪景色の中で鳥の羽根をくわえたエナガという小鳥に出会いました。この羽根は、じつは繁殖のための巣材。エッ、もう巣づくり? と目を疑いましたが、エナガは早い時期に子育てをする小鳥で、はや子育ての準備を始めていたのです。エナガの巣は、フェザーやダウンを敷き詰め、さらにコケなどで丹念に包んで断熱した厳寒にも負けないホカホカの巣なんだそうです。
湖などの水辺に目を移せば、一年のうちで最もきれいな羽に衣替えしたカモのオスたちが、繁殖相手とペアになって、北へ帰る本能が高まるのを待っています。藪の中では、昨日までチャッチャッと地味な声で鳴き交わしていたウグイスが、ホーホケキョ!と天下一品の美声でさえずり始めました。春はそこまで来ているのです。

富士山麓の美しい自然林が好きで、春先にも訪れたことがあります。モミなどの針葉樹と落葉樹が混じったほの暗い林を歩いていると、突然、視界一面に雪の精のような白い花が点々と浮かび上がりました。その幻想的な光景に思わず立ち止まると、それはつぼみをつけたミツマタの群落でした。近くには、マメザクラも小さな花をつけていました。高原の林で知る人もなくひっそりと咲く、こんな花景色に出会えるのも早春ならではの楽しみではないでしょうか。
身近な雑木林の春も大好きです。いち早く春を告げるコブシの白い花、早春の華やぎともいえるロウバイやマンサク、キブシなどの黄色い花々。桜が咲く少し前の林床では、カタクリやニリンソウが一斉に花を咲かせます。早春に咲く花はどれもこれも、どうしてこんなに清楚で凜とした佇まいなのでしょう。
小さな春を探しに出かけてみませんか。戸外はまだまだ寒いけれど、きっと、出かけて良かったと思える、心温まる時間がありますよ。