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シバトモのおきらく鳥♪日記 / 016

こんにちは。ごくごく普通のおばさんコピーライター、シバトモです。子育ても親の介護も経験し、もう人生後半戦。趣味はバードウォッチング、といっても、いっこうに上達しない万年ビギナーです。性格はいたってお気楽。そんな私がつづる「おきらく鳥♪日記」。どうぞ、おつきあいください。

笠間焼の藤本均定成さんは、工作少年がそのまま 大人になったような人。二十年ぶり!の再会です。

私には陶芸家の友人がいます。笠間の藤本均定成(ふじもとひとしさだなり)さん。これ、本名です。わが家には彼の作った焼き物がいくつもあり、生活の中で役立っています。器とはずいぶん慣れ親しんでいるのに、作者本人とはすっかり疎遠になっているなぁ…器を眺めていて、ふと、訪ねることを思い立ちました。
折に触れて送ってくれる便りによると、彼はひと言で陶芸家とくくれないような活動をいろいろやっている様子。作ること、面白いことが大好きで、工作少年がそのまま大人になったような藤本くんが、歳月とともにどんな変貌をとげているか、期待と興味を抱きながら笠間を訪れました。

京都と東京でデザインや前衛芸術を学んだ後、藤本くんは陶芸と石彫刻の両方ができる笠間に移り住み、工房を開きました。黒い肌の焼き締め陶器は、彼が得意とするスタイルのひとつ。モダンでありながら土の温かみを感じる彼の作風は、焼き物展やギャラリーで多くの方々に支持されています。デザインや使い勝手に着目したカフェやペンションでも使われていて、お客さんからの人気も高いとのこと。じつは「おきらく鳥♪日記6」で板わさを盛っていた二等辺三角形のお皿も彼の若い頃の作品なんですよ。
気軽に作品、作品と呼んでいたら、「自分が作るものは作品ではなく、製品なんだ」と藤本くん。それは、焼き物は使ってなんぼのもの、生活の器として使ってほしいという思いを込めた彼の謙遜であり、ものづくりへのこだわりなのだろうと私は勝手に解釈しています。そんな彼は、陶器の壁時計や手洗いシンク、土鍋、栗焼き器など、陶芸家があまり手掛けないものも好んで作ります。10年ほど前、NHKの紀行番組「小さな旅」で、藤本くんの作るタジン鍋が紹介され、一躍、時の人になっていたことは、まるで知りませんでした。
今回、店先で見つけて思わず買ってしまったのは、栗をモチーフにした大小のお皿。聞けば、栗は笠間の特産だとか。藤本くんらしいこの栗皿にどんなお菓子やおつまみを盛ろうか、今からとても楽しみ!

石の彫刻も焼き物と並ぶ彼の仕事のひとつです。日本が誇るインダストリアルデザインの巨匠、柳宗理氏から声が掛かり、柳宗理デザイン・藤本均定成製作の石彫作品が各地の美術館などに数多く設置されているそうです。でも、ここで紹介する笠間駅前の街灯と歩道のタイルは、作品ではなく実用品。夜間、市民の行く手を照らし、足下の安全を守る、こんな無名の仕事こそ、作家や芸術家と呼ばれることを好まない彼が目指すものなのかもしれません。工業製品であることが普通の街灯。ここでは、ひとつひとつ手で削られ、表情も微妙に違う。さりげないけれど贅沢な造形美が笠間市の玄関口に個性を与えています。
足元を彩るタイルにも、彼のアイデアが光っていました。バネを押しつけたギザギザの図柄は滑り止め効果をもたらすと同時に、だれもが簡単に楽しんで作れるところがミソ。作る人のちょっとしたクセで全て異なる図柄が、みんなの足元を守っているのです。私の街にも、こんなすてきな街灯やタイルがあったらいいな、とうらやましくなったのでした。

笠間に到着した際、藤本くんが迎えてくれたのは「ツクルイエ」。ここは、笠間市岩間に古くから伝わる竹の手仕事を残し、一般の人々にも広めることを目的としたスペース。そう、彼は、手仕事復興にも力を入れているのです。きっかけは、以前見た縁起物の小さな竹かごを復元できないかと茨城県唯一の竹細工職人・鈴木繁さんを訪ねたこと。鮮やかな技と気さくな人柄にひかれて工房に出入りするうちに、減る一方の孟宗竹の手仕事を増やし鈴木さんの技を伝える手伝いをしたい、と思ったのがツクルイエの始まりでした。
ちょっと耳慣れない響きの「笠間人車軌道」復元も彼が関わるプロジェクト。大正時代、笠間には8人乗り客車を1人が押す「人車」があり、これは面白い、地域のシンボルとして復元しようと企画。当時の客車を再現し、4mの軌道3つを順繰りに敷いて走らせ、復元成功! 面白い活動は、この他、書き切れないほど。どれもが、ものづくりが好きな藤本くんの「みんなで工作少年に戻ろう!」という取り組み。彼は昔とちっとも変わらない。ただひとつ違うのは、行く先々に知り合いがいるほど顔が広くなっていたことです。友達・仲間・協力し合う人々…この人脈は、純真で正直、面白いことと人間が大好きな彼だからこそ築けた財産でしょう。これからもどんどん面白いことやってね、藤本くん!