Menu

hanon

[はのん] 生活を楽しむあなたに贈るライフスタイルWebマガジン

シバトモのおきらく鳥♪日記 / 020

こんにちは。ごくごく普通のおばさんコピーライター、シバトモです。子育ても親の介護も経験し、 もう人生後半戦。趣味はバードウォッチング、といっても、いっこうに上達しない万年ビギナーで す。性格はいたってお気楽。そんな私がつづる「おきらく鳥♪日記」。どうぞ、おつきあいください。

あれ? エナガが羽根をくわえてるよ。
早春のバードウォッチングは、驚きがいっぱい!

バードウォッチングをしていると、数多くの出会いがあります。真っ赤なアカショウビンが奄美の深い森を飛ぶ姿、春の干潟で群舞する千羽超のシギ・チドリ…。お目当ての鳥やシーンを追い求め、ようやく願いがかなった幸運。それに比べると、今回お話しする春先の出会いは、文字通りのサプライズ。見慣れたエナガの命の営みを初めて目にしたり、深い山の中にいるはずの珍しいハトにいつものフィールドでばったり出くわしたり。シアワセの青い鳥は身近にいたのです。きっと、春という季節のせい。全ての鳥が本能に突き動かされて移動したり繁殖を始める時だから、どんなびっくり!が飛び出すか分からない。私は、そんな春先のバードウォッチングが大好きです。

日本で2番目に小さな鳥、エナガ。体長14cmのうち半分以上は尾で、名前の由来も「柄が長い」から。愛くるしい姿が人気の的です。いつもは群れになって枝から枝へと忙しく飛び回っているのに、なぜかその時は雪の上にポツンと1羽だけ。双眼鏡をのぞいてみると、くちばしにしっかりと鳥の羽根をくわえていました。この羽根、巣材なんです。エナガは早い時期から繁殖を始めるので、その巣は防寒仕様。フェザーやダウンをふかふかに敷き詰め、外側を苔で固めて、ヒナたちをしっかり寒さから守るのです。エナガ・ファンを自認する私ですが、それまで巣作りを見たことはなく、初めて目撃した瞬間なのでした。
ところで、エナガはなぜ早春から繁殖を始めるのでしょう。天敵である猛禽の活動が活発 になる前に子育てすれば卵やヒナが襲われる確率が低くなるから、といわれています。そんな訳で、人の目に触れることも少ないのですね。私は、尾っぽがカールしたエナガを何度も見たことがありますが、それは、子育てが順調に進んでいるサイン。エナガの巣はポーチのように丸くて小さいため、卵を温め続けるメスの長い尾が巣の形にクルンと曲がるんです。今、見たいと焦がれているのは“エナガ団子”! 巣立ちビナが体を寄せ合って枝に並んでいる姿です。さて、いつ出会えるでしょうか。

それは、通い慣れたフィールドでのことでした。探鳥会の昼どき、満開の紅梅・白梅が香る梅林でお弁当を広げでいたら、「あの緑色をした鳥、何ですか?」の声。見上げた先の鳥に、一同、目を疑い、そして歓喜の声を上げました。そこにいたのは珍しいアオバト! 深山にひっそりと暮らす鳥で、波が打ち寄せる荒磯で塩水を飲む不思議な習性でも知られています。そんなアオバトが、向こうから会いにきてくれるとは! ここは東京郊外のごくありふれた緑地。何のためにどこに行く途中なのか。春先は、こんな予期せぬ出会いが時折あるのです。
このアオバト君、肩口の葡萄色が薄いことから、若いオスと推測されます。最初は、やや離れたクヌギの木で新芽をついばんでいたのですが、若鳥だから警戒心が薄いのか、どんどん近寄ってきて、ついにはすぐ近くの梅の枝に。そして、お弁当の間じゅう、眼の前にいたのです。紅梅白梅と緑色の対比は、さながら一幅の絵を見るようでした。その後、近所に住む方がそっと様子を見守っていたところ、1週間ほど滞在し、無事飛び去ったそうです。

世界一美しいカモといわれるオシドリ。普段は奥に潜んでいることが多く、じっくり姿を見せてはくれません。ところが、春先の夕暮れ、初めて訪れたこの池では様子が違っていて、大群の姿が目に飛び込んできました。その数、じつに数百羽。こちらを気にする気配はなく、自由気まま。群れ全体が躁状態のように見えました。水辺でくつろぐもの、水しぶきを上げて1羽のメスを追うオスたち、水面から7〜8mはありそうな木の枝に止まっているものもたくさんいて、2羽、3羽と池にダイブしたり…。今、木の枝といいましたが、オシドリと樹木、じつは切っても切れない関係。カモなのにドングリが大好物で、巣は木の洞に作るし、木に止まるのも大好きなのです。やがて夕闇が迫ると、10羽、20羽と飛び立ち、池の上空を乱舞するように夜間飛行を始めました。オシドリが夜飛ぶなんて! この日は、今まで知らなかったさまざまな面を目にしたのでした。
その後、オシドリとの再会を楽しみに何度も池に来てみたのですが、目を凝らして探しても、せいぜい数十羽。カルガモとともに渡りをしないカモだといわれるオシドリですが、あの大群は、はて、どこへ消えたのか? 春先の幻のようにも思える、オシドリたちのにぎやかな宴の記憶です。