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今、日本語がヘン?! 金田一先生に聞く、
正しい言葉遣いのヒント。

“ら抜き言葉” に “さ入れ言葉”、“ほうほう言葉” に “バイト敬語” 、“二重敬語” など 。最近の若者が使う言語やSNSのデジタルメディアで飛び交う言葉に至るまで、とにかく今、日本語がヘン?! そこで、2019年、新たな一年の事始めに「そもそも正しい日本語って何なの?」という素朴なギモンについて考えてみようと、2018流行語大賞の選考委員でもある言語学者、金田一秀穂先生に、今どきの日本語事情について突撃インタビューしました。

心も新たに2019年をスタートするための、正しい言葉遣いの考え方。

SNS言葉は仲間言葉。日本語は時代と共に常に変化し続けている!

― 早速ですが一つ目の質問です。「最近、若者言葉が乱れている」などとよく耳にしますが、それはツイッターやLINEなどSNSが普及してきた影響もあるのでしょうか?

金田一先生 そうですね。SNSは言葉を使うメディアで、個人的な会話が飛び交いますから特殊な言葉が多い。要するに仲間言葉なんですね。例えばTVの発信は皆に向けられた言葉でしょう? だから2018年の流行語にもなった「ボーっと生きてんじゃねーよ!」みたいな言葉は視聴者全体に伝わるんですよ。でも同じ流行語でも「そだねー」はカーリングチームの中だけの仲間言葉。そういう言葉はリアリティがあって重みがあったりするんです。仲間意識が強い方が心に響くんでしょうね。例えば中学時代の先生のアダ名みたいなもので、クラス会で話題に出ると盛り上がるでしょ。そんなものだと思います。

― なるほど。確かに仲間言葉は盛り上がりますね。

金田一先生 そう、何より楽しいんですよ。お友達にもなれるし具合がいい。そういった仲間言葉がはやるのは当たり前なんです。20歳前後の若者はそんな言葉をよく使いますね。でもそれは仲間の間でしか使っちゃいけない。連帯感を生むと同時に、他の人を排除しますからね。その両方の働きがあるから、仲間でない人に使うと「乱れている」と言われちゃうわけです。

― でも間違いではない?

金田一先生 それは、「乱れ」ではなくて「変化」なんです。そもそも言葉に良し悪しの価値観はないんですよ。時代とともに変化しただけなんだよね。

― そういえば先生のご著書のなかでも、「だらしない」という言葉は、本来「しだらない」と言っていたけど、よりグダグダとしたいい加減さが伝わるように前後をひっくり返した言葉が江戸時代に生まれて、いつの間にか大多数派になって遂には「だらしいない」が定着してしまったというエピソードが紹介されていましたね。

金田一先生 「新しい」だってもともとは「あらたしい」だったんですよ。言葉をひっくり返すのは時々あるパターンです。

― 「寿司」を「シースー」とか?

金田一先生 そうそう。で、もっと言っちゃえば、元々の言葉というものは存在しないんです。全ての人が違う言葉をしゃべっていますから。時代、地域、世代によってそれぞれの言葉がある。全員に共通するスタンダードな元の言葉はないんです。常に変化を重ねて、さまざまな言葉が束になっていると考えた方がいい。日本の歴史を振り返っても「これがちゃんとした日本語です」と決めたことは一度としてないですから、仕方がないですよね。言葉は誰かが決めるものではなくて、僕らが毎日使ってて楽しめればいい。気持ち良く会話できていればいいんです。NHKに言われたって嫌だよ。まして金田一さんに言われたくないよってね(笑)。言葉というのはそういうものなんですよ。

― 要は気持ち良くコミュニケーションができれば良いと?

金田一先生 そうですね。仲間言葉は仲間同士でなきゃ通じない。意外と若者はそれを分かっていてあえて仲間同士で使いたがるんです。そして分からない大人たちを見て楽しんでいる。一方で大人たちは自分たちの言葉が普遍的だと思ってるけれど、実は仲間言葉をしゃべっているのに自覚がなかったりするんですよ。例えばペットを飼っている人は、犬って言わないでうちの子って言うでしょ。それも仲間言葉。お役所や企業の人達もアセスメントとかコンセンサスとか、カタカナ語をよく使うでしょ。「意味分かって使ってる? 俺達分からないよ」って思っちゃうんですよ。業界だけに通じる専門用語だって仲間言葉の一種。難しい言葉をしゃべっても、相手に通じなかったら意味がないですよね。

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